総務委員会

平成21年3月25日

○土井(亨)委員 自由民主党の土井亨でございます。
 ただいま、前段で秋葉委員からいろいろお話がございました。不祥事が続いて、その信頼回復のためにこれまで頑張ってこられた、そういうものに対しては大変敬意を表しております。
 しかしながら、私自身は、基本的にNHKに対する視聴者、日本国民の皆さんの信頼というのは大きいものがあるのだろう、大きいものがあるがゆえにやはり厳しい目も当然あるわけでありますから、そういう中で、約一万六千人の職員をまとめていく、一つのベクトルを持ってしっかりと公共放送としての役割を担っていくということを考えますと、これは大変なことだなというふうに思っております。
 そういう中で、昨年来、経営委員会と執行部の、対立とまではいきませんが、意見の相違等々、思いの相違というものが露呈をしたというのも事実ではなかろうか。そういうものがあって、昨年十月に議決された、今回審議をいたしております三カ年計画、これの中に、一〇%の還元というような形もございましたし、三年かけて還元の具体的な方法をしっかりと考えていくという方針も打ち出されているようでありますが、十四日の議決、その次の日の朝刊では、これは報道によればですので私自身確かではありませんが、当時の古森委員長は、この一〇%還元というのはすなわち受信料の値下げだと明言をいたしているという記事も掲載されておりました。
 結局、執行部の玉虫色的な一〇%還元という意味合いと、当時の古森委員長初め経営委員会が議決をした還元というものに二つの解釈があるとすれば、これは私は甚だ残念なことだなというふうに思っておりますので、ここで改めて会長と新委員長に、昨年来の議決を通した中での、一〇%還元、この還元というものの認識、とらえ方をお聞かせいただければと思います。

○福地参考人 私どもが作成いたしました三カ年計画書には受信料収入の一〇%還元というふうに書いておりますけれども、これは経営委員会からの修正動議に基づく文言をそのまま記載したわけでございまして、我々執行部といたしましては、一〇%の還元は受信料一〇%の値下げだというふうに、私どもは理解をしております。
 それから、新しい受信料体系につきましては、二十四年度から実施をするわけでございますけれども、二十一年度から取り組んで二十三年度中に、恐らく受信態様にも大きな変化が予測されます、そういったものを読み取りながら受信料体系を考えていきたい、かように考えております。

○小丸参考人 NHKは受信料収入によって運営されており、効率的な経営が行われなければなりません。そのためにも明確な目標が必要であると考え、三カ年計画に平成二十四年度以降の受信料一〇%還元を明記いたしました。
 来年度からの三カ年計画の中では、地上デジタル放送への完全移行という命題があり、還元は難しいということがありますが、この三カ年計画をきちんとした形で実行すれば、平成二十四年度以降の一〇%還元は可能であると考えております。
 具体的な還元の方法につきましては今後総合的に検討していきますが、幅広く視聴者の皆様にお返しするという意味からすれば、値下げが主であると考えております。

○土井(亨)委員 会長も委員長も、基本的には一〇%還元とは受信料の値下げだ、そういうふうな認識でおられるということだと思います。
 ただし、先ほど申しましたとおり新聞報道ですから余り、どこまで信憑性があるかというのはあるのでありますが、いろいろな新聞報道で、まるで経営委員会の修正議決の一〇%還元という考え方と執行部の考え方が一致をしていない、だからこそ還元という玉虫色のような形で決着をしたというような報道もなされている。これは視聴者の皆さんや国民の皆さんには大変申しわけないことだなというふうに私は感じております。
 大臣、一般論で結構でございますので、この一〇%還元、これはまさしく受信料の値下げだというふうにとらえられているのか、また、いろいろな具体的な方法、間接的な還元もそれはあるなというふうなお考えなのか、その辺の大臣の御認識、解釈というものをぜひお聞かせいただきたいと思います。

○鳩山国務大臣 執行部と経営委員会の方で非常に緊張感のあるやりとりが昨年行われておりましたことは、世の中はもめていると受け取ったかもしれませんけれども、私は、緊張関係のある、よい議論が進んでいったな、こういうふうに思っております。
 その結果、一〇%還元という形で決着をしたわけでございまして、還元というのでしょうから、国民・視聴者に何らかの利益がもたらされるということと理解いたしております。
 答弁書とちょっと違うことを言いますけれども、私は、一〇%還元というのは、今会長から、あるいは経営委員長からもお話がありましたように、還元という言葉を使われますと、受信料の値下げというふうに受け取るのが常識だろう。それは、例えば全国各地で何かNHK祭りをやって、あめ配ったり風船配ったりするとかということもあるかもしれませんけれども、一般的に言えば、一〇%還元というのは一〇%の料金の引き下げのことを意味すると思います。

○土井(亨)委員 ありがとうございます。
 私も、還元というと、とらえ方とすると、受信料の値下げというふうに解釈されるのが普通だろうと思います。
 大臣は今、経営委員会と執行部、緊張感があっていいというような御認識でありますが、緊張感はいいのでありますが、それが対立とか確執とか、そういうふうなとらえ方をされるということは、まさしくこれはNHKにとっても不幸なことでありますし、国民・視聴者の皆さんにとっても不幸なことでありますので、ぜひ、建設的な議論、そしてまた前向きな議論、それによって国民・視聴者の皆さんの期待にこたえていただきたいと思います。
 しかしながら、今の経済状況を考えますと、一〇%還元というと、およそ六百六十億ぐらいでしょうか、六百億ぐらいでしょうか、これは大変なことだな、いろいろな改革を進めていく中でも、これを生み出すということは本当に大変だというふうに思っております。まして、三カ年の計画を見せていただいても、ことしと来年は赤字になるというふうな計画。最終年度は黒字に転換するというふうな計画ではありますが、しかし、やはりこういう時代でありますから、経済状況も含めて考えますと、大変なことだなと私は思っております。
 ここで、できなかったらどうのこうのという後ろ向きの議論はしたくないわけでありますので、ぜひ、この一〇%還元、何としてもやるんだという御決意を会長にお伺いさせていただきたいというふうに思いますし、経営委員長には、経営委員会が修正議決までしてこの一〇%還元という文言を明記したわけですので、経営委員会としてどういうバックアップをとっていくのか、そういうものも含めてお伺いをしたいと思います。

○福地参考人 確かに御指摘のとおり、百年に一度と言われるようなこういった経済情勢の中で、この一〇%の値下げというのはかなりハードな目標であることは十分承知をしております。
 執行部と経営委員会の意見が対立いたしましたのは、一〇%そのものが悪いのではなくて、三カ年計画であるのに四年目の数値計画を約束しないでもいいんじゃないですかということでございました。しかし、これは放送法に基づく民主主義のルールで修正動議がありました以上、そこで多数決で決定いたしました以上、それには潔く従ってまいります。
 その中で、修正動議によって一〇%値下げということは決まりましたけれども、そのために新しい施策をつけ加えたわけではございません。私どもは、執行部がつくりました三カ年計画をきっちりとやっていけば、二年間にわたって若干の赤字補てんはしないといけませんけれども、一〇%の値下げというのは可能だということは認識をしております。そういったことでありますので、まだスタート台に立っておりませんが、四月からスタートいたします新しい三カ年計画については、全職員挙げて達成に邁進してまいります。
 以上でございます。

○小丸参考人 三カ年計画は、執行部と何度も議論を重ねました。私も平成十六年六月から経営委員を務めさせていただいていますけれども、これだけ燃えた会議はなかったと思います。それだけ熱意を持ってやってきたということを御認識していただきたいと思います。
 最終的に経営委員会として適切と判断して議決をしたものであります。会長も、決まったことはしっかりと実行していくということを明言されております。経営委員会としては、執行部と協力しまして、計画遂行に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。
 確かに、厳しい経済環境、現状の足元はございます。ございますけれども、今は計画達成に向けていろいろと取り組むことが最大のミッションだと思っております。現時点では、一〇%還元ができない場合を想定するのではなく、これに向けてどうやっていくかということが大切かと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○土井(亨)委員 ぜひ、国民・視聴者の皆さん方の期待を裏切らないような形で取り進めていただきたいというふうに思います。
 NHKの計画の要約版を拝見いたしますと、経営方針がございます。私、前に、信頼回復のためにはやはり組織がしっかりとしなきゃいけない、その組織がしっかりする場合には、職員の皆さんの意識改革が第一番目に来なければならないのではないかという質問をさせていただいたことがございます。
 今回の方針七に、改めて「構造改革」という文言が入っております。「効率的な体制で」ということでありますが、この構造改革という文言が入ったということは、会長自身でNHKのどういう構造を、まあ悪いという点ですが、変えていこうとしているのか、その辺の趣旨といいますか、その点をお伺いさせていただきたいと思います。

○福地参考人 執行部がこの計画の中で述べております構造改革には幾つかございますが、最大は、やはり職員の意識改革であると思います。
 それは、かねてから、NHKには限りませんけれども、特にNHKの場合には縦軸の組織が強過ぎる。私は、縦軸の組織というのは仕事をしていく上で大切なことだと思っておりますが、縦軸の組織に閉じこもって横のコミュニケーションをしないというところが悪いわけですから、そこのところに横風を入れるということが最大だと思います。
 そういった見地から、就任早々いたしましたのが、まずはトップからということで、理事の個室を廃止いたしまして大部屋に入ってもらいまして、まずは理事の間で横のコミュニケーションをよくしようというところからスタートいたしました。
 いろいろな取り組みをやってきておりまして、最近は、番組を制作する中でも、この番組制作チームとこの番組制作チームが一緒になってやろうというような番組、そういった動きも出てきましたので、私は、そういった制度が実際に職員の仕事の中に生きてきつつあるなということを実感しております。
 そういった問題から、もう一つは放送の構造改革でございますが、これは後にもいろいろな御意見の中で出てまいるかと思いますが、今、視聴者というのは多様化して高度化してきている。そういった視聴者の多様化、高度化に我々がおくれていてはNHKが取り残されてしまう。私は二十一世紀のマンモスになってはだめだということを言っておりますが、そういったために、放送面で多様化、高度化についていく。
 それからもう一つは、御指摘の中にもございましたが、地域の活性化ということに取り組んでいきたい。地域放送局が地域の力になるようなお手伝いをしたいということが一つでございます。
 それからもう一つは、関連団体がそれぞれの動きをするんじゃなくて、NHKグループ一体となって、グループとしての最大効率化をねらっていきたい。
 そういった一連の動きを構造改革と。構造改革については、人を減らす、金を減らすということよりも、必要な部分に人と金という経営資源をシフトするという考え方にのっとって進めてまいります。
 以上です。

○土井(亨)委員 時間もなくなってまいりました。
 今、会長からお話しいただきました。ただ、私自身、聞くところによるとというお話をさせていただければ、やはり職員間の中での内在的な、今までのNHKの体質というのがまだぬぐい切れていないのではないかというふうに思っております。
 今、会長からいみじくも、地域に貢献をしたい、そういう体制をつくるというお話をいただきましたが、やはり私は、渋谷、NHK本局よりも、地方局の皆さんの頑張りというのがまさしくNHKを支えているのだろうと思います。
 そういうことを考えますときに、東京に行ける職員は優秀な職員だ、いつまでも地方にしかいられない職員はだめな職員だというような風潮があるやにも聞き及んでおりますので、そういう意味では、ぜひ、職員の皆さん方が渋谷でも地方でも、本当に自分たちが精いっぱい頑張れるんだ、頑張って仕事をしていくんだという社風といいますか、そういうふうな社内の風土というものをしっかりと確立していただきたいものだ、私はそういうふうに思っておりますので、その点はよろしくお願いをさせていただきたいと思います。
 時間もありませんので、最後に大臣にお伺いをさせていただきたいと思っております。
 今日まで、前段で申しましたとおり、大臣は緊張感があっていいことだというふうにとらえられましたけれども、経営委員会と執行部、またNHKの内在的な問題を踏まえて、やはりもう一度ここで原点に返らなければならない。
 それは、公共放送の本来の姿、役割というものをもう一度共通認識をとりながら、まさに国民・視聴者の皆さん方にすばらしい番組また情報を提供していただかなければならないというふうに思っておりますので、もう何度も大臣は過去に御発言いただいているかもわかりませんが、改めて、大臣として、公共放送に対する期待、役割、あるべき姿、そういうものをどういうふうに考えられているか、お話を賜りたいと存じます。

○鳩山国務大臣 公共放送であるということは大変なことでございまして、民放ではない、公共放送であって、それが放送法で位置づけられているという重みは十分に認識をしていただかなければならないわけでございます。あまねく日本全国における放送をする、豊かでよい放送番組を提供する、国際放送をやる、こういう意味では、民間放送とは異なる社会的使命、あるいは民間放送よりもはるかに重い社会的使命を担うことが期待されているわけでございますから、その放送法の趣旨を踏まえて、高い公共性と社会的責任を自覚していただきたいと思うわけでございます。
 ただ、公共放送だ、我々は強いんだというおごりの中から生まれたような不祥事もあっただろうと思いますから、そういった意味では、道義的な部分とか、あるいは倫理観とか、そうしたものもNHKの中で醸成されていくような空気をつくっていただきたいと思っております。

○土井(亨)委員 ありがとうございました。
 ぜひ、今後のNHKがまさに国民のため、視聴者のためのNHKでありますようにお願いを申し上げ、質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。