内閣委員会

平成20年5月14日

○土井(亨)委員 おはようございます。自由民主党の土井亨でございます。質疑をさせていただきたいと思います。
 私自身、正直申しまして、この基本法が本当に必要なのか、悪い意味で必要なのか、そこまで国家公務員、公務員の皆さん方は自浄能力がないのかというような思いがございます。
 たび重なる不祥事等々を含めて、この国の公務員のあり方が問われているのは確かでありますし、また、九七年の行政改革会議最終報告書にも、公務員の制度改革ということで報告書が出ておりまして、以来、いろいろな施策を講じてまいっておりますが、国家公務員に対する批判というものが今もって国民の皆さんから払拭されない。
 私の小さいころは、霞が関は不夜城だ、夜も寝ないで国のために一生懸命働いてくれている、それがやはり国民の皆さんの国家公務員の皆さんに対する、公務員の皆さんに対する考え方だったんだろうというふうに思いますが、今はなかなか、そういう国家公務員に対する国民の皆さんの信頼というのが失われているというのも現実だろうというふうに思っております。
 国の統治機構が変わったので国家公務員の役割も変更しなければいけない、地方分権が進んで国家公務員の仕事も減ってきた、だから国家公務員の制度改革が必要なんだということであれば私も理解できるわけでありますが、そういうことではない中でこの基本法が今回出されたというのは、私は、個人的には大変不本意な思いをいたしております。
 余談になりますが、ネットでちょっと調べてみました。昔は、国家公務員のことを公僕かお上とよく言われておりました。ところが、公僕というふうに言われることに、国家公務員の皆さんはきっと抵抗感を覚えていたんだろうというふうに私は思います。公僕、すなわち広く公衆に奉仕をする者、一般国民に奉仕をする人、公務員のこと、これが公僕であります。一方で、お上という名称もあります。このお上、庶民から見た権力者のこと、天皇、朝廷、主君、現代では政府、官僚、公務員がこれに当たる。このお上という意識の方がいつの間にか強くなって、今のような現実が生み出されているんだろうというふうに私は思います。
 まず大臣に、いろいろな形で公務員制度改革というのは行われてきた。なぜ今、改めてこの基本法が必要なのか。今回のこの基本法によって、どのような国家公務員像をつくり上げようとしているのか、どのような国家公務員をつくるのか、その辺の大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○渡辺国務大臣 明治の初期に我々の先祖たちは、当時の近代国家のいろいろないいところを取り入れた、まさにその時代の最先端の官吏制度をつくったんだと思います。封建制度の身分制を廃し、家柄、門地、身分、そういったことに全くかかわらずに優秀な、能力のある若者を官吏として登用していったわけでございます。
 残念ながら、我が国が準戦時体制のもとで、政治というものが否定をされ、政党が排除され、究極の官僚主導体制が一九四〇年前後にでき上がったわけでございます。そうした制度が、実は戦後も引き続いているという説がございますが、戦後、まさに国民、国家の繁栄に積極的な役割を果たしてきたのも事実でございます。しかし、その後の世界の情勢、社会経済情勢の変化に対応できなくなってしまったではないかという大批判があるのも事実でございます。
 昨年、能力・実績主義の人事管理の徹底、天下り規制の導入を内容とする国家公務員法の改正を行いました。これにとどまることなく、今回の基本法案によって、国家公務員の人事制度全般の課題についてパッケージとして改革を進めるものであります。
 今回の改革においては、一人一人の職員が、その能力を高めつつ、国民の立場に立ち、責任を自覚し、誇りを持って職務を遂行するという姿こそが、目指す国家公務員像であります。同時に、総理の施政方針演説において述べられたように、行政や政治を国民本位のものに改め、常に国民の立場に立つをモットーに、公務員の意識改革も必要になったと考えるものでございます。

○土井(亨)委員 今大臣からお話をいただきましたが、公務員の皆さん方には、お上意識はやめてほしいというふうに思います。
 公僕とお上という相反する言葉があります。ぜひ、お上意識というものを取っ払っていただいて、原点に戻って公僕と、必要以上にそう思う必要はないのでありますが、この国のために、国民のために懸命に働くんだ、国民の皆さんからいただいた税金はしっかりと、この国のために、国民の皆さんのために使うんだ、そういう思いで、この公僕という言葉、どっちかというと忘れ去られている、公務員の皆さんが嫌がる言葉だというふうに私は思いますが、この公僕というものをもう一度考え直していただいて、公僕というものに対してもう少し意識を高めていただきたいというふうに思います。
 二点目なんですが、今大臣からお話しいただきました意識改革。企業もそうでありますし、特に自治体、いろいろな不祥事が起きましたときに、知事を先頭に一番最初にやるのは、職員の意識改革であります。これはもう、全職員に対してやられるわけであります。
 私も宮城県の県会議員をやりまして、食糧費やいろいろな問題がありました。そのときに、一番初めに知事が取り組まれたのは、やはり職員の意識改革。みずから律して、みずからしっかりと組織をいいものに変えていく、これが職員の意識になければ、どんな法律をつくっても決してよくなることはないんだろうというふうに思っておりますので、この意識改革というのが物すごく大切だというふうに私は思っております。
 国家公務員でありますから、省庁設置法等々、いろいろな意味で法律があるわけでありますが、公務員という、そういう職というものからすれば、どの省庁からいろいろな形で不祥事が出てきたにしても、全省庁が意識改革にまず取り組まなければならないというふうに私は思っております。
 今日まで、国家公務員の皆さん方はどう意識改革に取り組まれてきたのか、そしてまた、これからどういう形で意識改革というものに取り組んでいかれるのか、お聞かせいただきたいというふうに思います。

○渡辺国務大臣 今回の基本法案は、国民全体の奉仕者である国家公務員について、議院内閣制のもと、国家公務員がその役割を適切に果たすことという基本理念にのっとって改革を推進するものでございます。そういう理念のもとにおきまして、例えば総理の施政方針演説で述べられたように、常に国民の立場に立つということをモットーに、御指摘のような公務員の意識改革を進めていく必要があろうかと思います。
 今回の公務員制度改革においては、公務員一人一人が高いモラルを維持し、能力を高め、誇りを持って職務に専念できることを目的としているものでございます。

○土井(亨)委員 よく、省益あって国益なしというふうに言われます。その省のために頑張るんだというふうに、私はそうは思っておりませんけれども、とかくそういうふうな形で言われている昨今でありますから、決して省益のためにやっているんではないんだ、この国のために頑張っているんだという意識を持っていただくために意識改革というものも、これは総理大臣を筆頭に各大臣が、まさにサンドバッグ、役所と闘う姿勢を持って、そのことをしっかりと示していただきたい。そして、その意識改革というものをしっかり高めていただきたいというふうに思います。
 そういう中で、私が思うのは、よくこれも市民の皆さんに聞くんですが、責任をとっていないじゃないか、不祥事やいろいろなことがあっても、公務員はだれが責任をとっているんだと。ある意味、かわいそうなのは大臣の皆さんだと私は思いますよ。大臣に就任して喜んで、その省の不祥事が起きたときに、一番最初に責任を問われるのは大臣ですから、大変かわいそうなことだと私は思っています。ある意味、大臣が責任をとるのは、そういう省の不祥事が起きたとき、その省の責任をどう明確化するか、だれがどういう責任をとるのかということだというふうに思います。
 一例で言えば、今の年金問題、社会保険庁の職員。私は、政治の責任もありますが、職員の側の責任というものが重大だと思います。だれも責任をとらないんじゃないか、そういう不満が多くの国民の皆さんにありますし、公務員というのは責任をとることがないんだというような考え方を持たれていらっしゃるのも現実だというふうに思っておりますので、ぜひ大臣、この意識改革というものに取り組まれるとき、責任の所在をはっきりさせる、不祥事を起こした者にはしっかりと責任をとらせるんだ、そういう仕組みも同時にとっていただきたいというふうに思いますが、大臣のお考えをお聞かせいただければというふうに思います。

○渡辺国務大臣 今回の基本法案におきましては、職員の倫理の確立及び信賞必罰の徹底ということを第九条においてうたっております。例えば、人事評価について、国民の立場に立った職務遂行する態度その他の職業倫理を評価の基準として定めること、あるいは、職務上知ることのできた秘密を漏らした場合その他の職務上の義務に違反した場合または職務を怠った場合における懲戒処分について、適正かつ厳格な実施の徹底を図るための措置を講ずること、また、国家賠償法に基づく求償権について、適正かつ厳格な行使の徹底を図るための措置を講ずることなどについて規定をしているところでございます。
 ともすれば官僚の無謬性ということが強調され、責任逃れの言辞が横行してきたことに対する反省を踏まえて、このような九条の規定を設けたものでございます。

○土井(亨)委員 よくわかるんですけれども、私自身、不祥事の場合、あといろいろな意味で、無駄遣いをした場合、その部分を含めてその省がしっかり返還するんだというぐらいの信賞必罰じゃなけりゃだめだというふうに思います。
 これも地方公務員、地方のことを言うと大変申しわけないんでありますが、先ほど申しましたとおり、宮城県が膨大な食糧費で問題を起こしたときに、全職員が、またOBも含めて負担をして返還をした。このぐらいのきちっとした責任の明確化、そこまでしっかり責任をとらせるんだ、そういうものがなければ、私は、意識改革もできないでしょうし、今までのような省益あって国益なしというふうになるんだと思います。
 自分たちが省益のためにやっていることがもし問題になれば省全体が責任をとらせられる、その省のみならず全省庁が責任をとるんだ、とらせられるんだ、そういうしっかりとしたものがなければ、一生懸命やられている公務員の皆さんもたくさんいるというのは承知をいたしておりますが、この国家公務員に対する国民の皆さんの思いを払拭することにはなかなかならないんだろう。そのぐらいの覚悟を持ってぜひ取り組んでいただきたいというふうに思います。
 ちょっと基本法案の中身を質問させていただきたいと思います。
 今回は、内閣人事庁を設けるということで、一元的な管理をすると。もしかすると今答弁されたような中身かもわかりませんが、私は、人が人を評価するというのは大変難しいことだというふうに思っております。しかし、人が人をしっかり評価するということになるわけであります。そういう意味では、今までもそういうことだったんでしょうが、人事庁が一元管理をしてその評価をするというふうな形になっておりますが、私は、その評価の仕方というのは大変難しいものだろうというふうに思っておりますし、新たにこういう人事庁という形で管理、評価をしていくわけでありますから、なおさら、今までのものを引きずった形での評価システムであってはならないというふうに思っております。
 改めて、この人事庁の人に対する評価システムというものをどのように大臣は考えていらっしゃるか、お伺いをさせていただきたいと思います。

○渡辺国務大臣 国家公務員の評価システムについては、さきの国家公務員法改正におきまして、人事管理の基礎とするため、新たな人事評価制度が導入されたところでございます。
 加えて、今回の基本法案では、職員の育成及び活用を府省横断的に行うとともに、幹部職員等について、適切な人事管理を徹底するため、内閣人事庁が人事評価を含む幹部職員等の人事に関する情報の管理を一元的に行うことにいたしております。これによって、内閣人事庁において人事評価に基づいた幹部職員等の人事管理を一元的に行うことが可能になるわけでございます。縦割りの各省割拠主義の弊害というものをこうした観点からも除去していこうということであります。
 また、具体的な評価システムについては、基本法成立後、基本法に基づく措置を含めて整備されることになってまいります。

○土井(亨)委員 今申し上げましたとおり、私は、人が人を評価するというのは大変難しい、そしてまた、そこに公平さを求められるということになるとなおさら難しいというふうに思っておりますので、ぜひその辺、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思っております。
 もう一つ、今申しましたとおり、人が人を評価したり一元管理をするわけですから、この人事庁の職員の方々はやはり崇高な思い、理念や使命を帯びるというふうに思っております。そういう意味では、各省庁から人事庁の職員を募るのか公募するのか、そういたしましても、当然、その省庁の影響というものが陰になり、いろいろな意味で疑いを持たれる、疑いと言うと変ですけれども、そういうものが足かせになることが想定をされるというふうに私は思っております。
 私は、この人事庁というもの、そしてまた職員も含めて、相当の権限といいますか、省庁の抵抗やそういうものに、変な話ですが、きちっと対抗し得るものでなければ組織の意味がないというふうに思っておりますので、この内閣人事庁というものの組織の権限のあり方、そしてまた省庁との関係、そういうものをちょっとお聞かせいただければというふうに思います。

○渡辺国務大臣 内閣人事庁が各府省のトンネル機関になってしまったら、これは元も子もないことでございます。
 本法案においては、内閣人事庁の所掌事務について、職員の育成及び活用を府省横断的に行うとともに、幹部職員等について、適切な人事管理を徹底するための事務を一元的に行うことを明確に規定いたしております。
 内閣人事庁の具体的な権限については、基本法案成立後に検討することになりますが、各府省の立場を超えて政府全体の立場に立った視野を持つ人材を育成、活用し、内閣としての一体性を確保するという設置目的に合致するものでなければならないのは、当然のことであります。

○土井(亨)委員 ぜひ独立性を持たせて、省庁のそういうものの影響を受けないような形でしっかりとした組織をつくっていただきたいというふうに思います。
 次に、今回は、幹部候補生を育成するということで取り組まれる。ただ、これが余り過度になりますと、固定化を招くわけであります。やはり、幹部候補ということで育成されている職員であっても、途中で不適格だったりいろいろな評価がされるわけでありますし、また、幹部候補になれなかった職員、そういう方々の意識というものも低下をすることも予想されるわけでありますから、私は、余り固定化しない方がいいというふうに思っております。
 その辺の選抜に際して、また育成が始まってからの入れかえ、入れかえというと変ですね、そういう中での流動化、そういうものをお考えになっていらっしゃるのか、その点、お聞かせいただきたいと思います。

○渡辺国務大臣 今回の基本法案は、身分制的であるという批判のある現行のキャリアシステムを廃止することを柱の一つにいたしております。御指摘の幹部候補育成課程についても、「課程対象者であること又は課程対象者であったことによって、管理職員への任用が保証されるものとしてはならず、職員の採用後の任用は、人事評価に基づいて適切に行われなければならない。」と明記いたしております。
 さらに、幹部候補育成課程は、人事評価に基づく選定と絞り込みを根本原則とし、採用試験の区分にとらわれることなく、能力・実績主義が徹底される仕組みとして整備することといたしております。
 したがって、こうした規定から、現行の身分制的キャリア制度は廃止をされ、まさしく能力・実績主義に基づいた人事制度が確立をされるものと考えます。

○土井(亨)委員 では、この幹部候補育成課程、幹部候補ということで育成される方々というのはどういう方々なんですか。どういう選抜をされるわけですか。

○渡辺国務大臣 まさしく人事評価に基づいて能力・実績主義を徹底していこうということでございます。したがって、試験の種類の違い、例えば総合職、一般職、専門職、いずれのルートからでも幹部候補になっていけますよ、そういうことを明確にしているものでございます。今の、現行のキャリアシステムというのは、1種試験合格者が自動的に幹部候補のルートに乗っていくということでございますから、その点が根本的に異なるわけであります。

○土井(亨)委員 学力主義とよく言われるわけでありますが、ぜひ、仕事を一生懸命頑張る、頑張って本当に努力をしている、そういう皆さんでも、ある意味しっかりとした評価によって、頑張りがいがあるような、そういうシステムにしていただきたいというふうに思います。
 時間もなくなりましたので、多分最後の質問になるんだと思いますが、今回、政官接触の集中管理ということで、専門官ですか、政務専門官というものを新しく設けるということで、いろいろな説明等々はその専門官が行うというふうに書いてありますが、その中で「その他の政務」というのもあります。政務専門官が行うその他の政務というものはどういうものなのか。
 そしてまた、それ以外の職員が国会議員と接触をするときには大臣の指示を得なければならないような規定になっておりますが、私は、これはちょっと非現実的に近いのではないかなというふうな感覚を持っております。職員が議員に接触というかいろいろ会う場合、一々大臣の指示を求めていかなければならないのか、そこまで大臣は暇なんですかねというような感覚なんですよ。そんなことに大臣が一々指示を出すより、もっと大臣としての職責を果たしていただきたいという思いが強いものですから、これはちょっと非現実的に近いような感じもいたします。
 政務専門官の説明以外のその他の政務というものはどういうものを想定されているのか。そしてまた、職員が議員と接触する場合に、大臣の指示を受けるということよりも、しっかりと複数の職員が議員と会ってメモをとって、もしいろいろなことであった場合は、このあなたの発言、要請、要望というものは公にされますよということで面会をした方が現実的だというふうに思いますが、その点、大臣のお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。

○渡辺国務大臣 この規定は、真の議院内閣制を実現するために置かれたものであります。すなわち、官僚主導体制、ともすれば官僚内閣制などとやゆされるシステムが、大臣の御意見はさておきなどといってロビーイングを許してしまう、そういう危うさを持っております。
 したがって、真の議院内閣制を実現するためには、内閣主導型の体制、すなわち政治主導の体制を確立していくことが大事なことであって、そのような官僚主導のロビーイング活動を根本的に規制していこうという趣旨でこの規定を設けたものでございます。国会議員の側からの情報収集などを妨げないような具体的な制度設計を行ってまいりたいと考えます。

○土井(亨)委員 もう時間が参りました。ある意味、私は、議員というのは、いろいろな説明を聞いたり、またいろいろな資料提供を求めたり、そういう中で議員活動が進むんだろうというふうに思っておりますので、説明に対しての専門官は私はよしといたしますが、議員との接触というものに対しては、むしろ公務員の方の意識をしっかり高めて、議員からのいろいろ不合理なそういうものには応じないんだという気概で接触をするということの方が、私は理にかなっているような気がいたします。
 最後に、大臣はいろいろな形で御活躍で、大臣を担当する者は本当に省庁からサンドバッグ状態に遭う、そういう難しい問題を担当されるということで、ぜひ大臣のますますの指導力、リーダーシップ、御活躍に御期待をさせていただき、質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。