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内閣委員会
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平成19年3月23日 |
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○土井亨委員 おはようございます。自由民主党の土井亨でございます。
きょうは三人の先生方に、十分間という短い時間でありましたけれども貴重な御意見を賜りまして、まず御礼を申し上げさせていただきます。
初めに、この法律は、国際犯罪を未然に防ぐということではまさに国際社会との協調、協力、同一歩調ということで、私は大変大切な法案だというふうに思っております。その中で、先ほど中野目先生の方から、組織という部分でFIU業務が金融庁から国家公安委員会に移管された、これは専門技量、専門的知見を持っているということで大変いいことだというようなお話を賜りました。
改めて中野目先生にお伺いをさせていただきたいと存じますが、FIU業務が公安委員会に移管されたということで、これによるマネロン、テロ対策にどのような効果がもたらされるというふうにお考えか、まずお聞かせいただきたいと存じます。
○中野目参考人 ただいまの御質問でございますけれども、警察庁の方が組織犯罪等については相当に多量の情報の蓄積をしているということもございますので、疑わしい取引が報告されたときの、既存の自分の方で持っている情報との組み合わせで、今までよりも一層効果的な情報の分析ができるのではないか。的確な情報の分析をすることがどのような方策をとるかということについての基礎をなしますので、その意味で極めて重要な方向を示したものではないかというふうに考えております。
また、体制それ自体についても、従来よりも拡充される方向であるというふうに聞いておりますので、その点でも、今度の法案によってさらに組織犯罪等についてのより十分な対処がされていくことになるのではないかというふうに考えている次第です。
○土井亨委員 ありがとうございます。
続きまして、また中野目先生と、今度は村岡先生にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
今回の法案では、弁護士、あと司法書士を含めた士業の皆さんに対しては、報告義務を課さないということにいたしております。特に弁護士については、会則でしっかりとやってくれ、そういうような形になっておりますが、八条の三項に、「政府及び日本弁護士連合会は、犯罪による収益の移転防止に関し、相互に協力するもの」というふうに規定をされております。
いろいろな議論の中で、日弁連さんが報告義務というものに大変な反対をされた。弁護士自治というものもございます。私は、やはり適切な緊張関係というものが必要だというふうに思いますし、また、先ほど村岡先生の方から、FATFの審査が入ったときに、弁護士、士業が報告義務を課せられていないということになると、不履行ということにされるのではないかというようなお話もございました。
私もその点は大変懸念をいたすのでありますが、しかし、我が国の弁護士制度を含めて弁護士というものの職責、また先ほどからいろいろお話がありましたとおり、国民の皆さんの信頼というものを考えれば、やはり我が国のこの法律の趣旨というものをしっかりFATFにお話をしなければならない、訴えていかなければならない。そのためにも、この三項というものが大変重要な意味を持つのではないかと私は思っております。
そういう意味で、改めてこの三項の「相互に協力する」という、その「協力」というものをどのようにお考えになられているか、中野目先生、村岡先生にお伺いをさせていただきたいと存じます。
○中野目参考人 それでは、ただいまの御質問についてお答えしたいと思います。
まず、「協力」ということの意味ですけれども、これは既に日弁連の方で会則を改正して、本人確認、それから本人確認についての記録保存ということを定めるということをしております。こういう意味での協力は、ここの八条三項に言う「協力」ということの意味の中に入るのではないかと思います。
さらに、今回の法案では直接触れられていないわけですけれども、弁護士会の方が疑わしい取引について審査をした上で、さらにそれについて当局に報告をする必要があるというふうに判断した場合に、それを当局の方に告げるという制度が前回検討されたわけですけれども、これについては、弁護士会の方では、絶対受け入れないという趣旨でそういうふうに言われたということではないようにも伺っております。将来的には、そういう点も含めて検討するという余地が残されているのではないかと思います。
一番問題なのは、弁護士と依頼者との間の秘密保持が害されるということになると、依頼者の方で、率直に自分の持つ悩み、トラブルというものを弁護士に告げて、弁護士から法的助言を得るということができなくなってしまうということを懸念されているんだと思うんですね。
他面で、それでは依頼者の方が犯罪にかかわる情報を持ってきて、自分がこれからさらに犯罪を行いたいとか、あるいは、現に行っている犯罪について発見されないようにするためにはどういうふうにしたらいいかということについてアドバイスを得たいというような場合ですと、では、これは弁護士と依頼者間のコミュニケーションだからというので秘密保持の保護の範囲の中に入るのかというと、これははっきり入らないということで考えていく必要があるのではないか。英国、米国等においても、こういう犯罪促進目的で行われるコミュニケーションについては、弁護人、依頼者間の特権といいますか、その保護の対象の中には入らないということでずっと議論が展開されてきております。私も、日本の場合にもその前提に立って議論を展開するべきではないかというふうに考えている次第です。
○村岡参考人 八条三項の相互協力ということの意味ですが、弁護士会においても、国際的なマネロン対策に協力をするという政策については一致しているわけです。ただ、その規制のあり方の中に、弁護士会としては、先ほども言いましたように、どうしても譲れない原理といったものがあります。
世界を見渡しても、この規制のあり方で二つの方向があります。
一つは、最初にすべての士業、法律職を含めて原則報告をさせるという一律の義務化をした上で、例外的に解除をしていく、先ほどの秘匿特権づきの情報については例外に扱うといったような方向。もう一つは、アメリカがやっているように、総合的な施策でさまざまな分野でそれぞれの分野が対処をする、したがって、弁護士の場合にも守秘義務の解除という方向から、守秘義務違反に問われない、そしてなおかつ犯罪撲滅のためにそういう情報を開示していこうという、逆のアプローチがあるわけです。
私は、日弁連がどちらの方向をとるのかという点について意見を申し上げる立場にありませんけれども、少なくともそういう二つのアプローチの違いがある中で、むしろ後者のアプローチの方が弁護士の原理といったものを守る意味ではすぐれているだろうというふうに考えているわけです。
ですから、「相互に協力する」ということの意味は、同じ目的を持っているけれども、その規制の仕方というのは、今回の法律案のような一律報告化の義務を目指すということではないというふうに理解をしております。
○土井亨委員 ありがとうございます。
私も、今回のこの八条については大変評価をいたしております。弁護士自治、また弁護士の先生方の職種といいますか、重大な国民との信頼関係を含めれば、報告義務を課さないというのは私は評価をいたしているところでございます。ただ、先ほど申しましたとおり、FATFの審査というところでその辺が重要になってくるのではないかなということでございます。そのためにも、やはり日弁連の会則で、日弁連としてもマネロン、テロ対策にしっかり取り組むんだということを定めていただかなければならないなというふうにも私は思っております。
続きまして、十七条についてちょっとお伺いをさせていただきます。これも中野目先生と村岡先生にお聞きしたいと思います。
今回の法案以前にも、金融庁にございましたFIU、それについてのFATFの審査というのもございました。IMF及び世界銀行の審査というものもありまして、その際、マネロン対策においては検査機能が不十分だ、また、監督行政庁間の連絡協力関係が不備だというふうな指摘もされております。検査機能の不備というものがどこを指すのか、私もまだちょっと理解に苦しむところでありますが、その点を考えれば、今回の法律、十七条においては、前段に十三条、十四条、十五条、十六条ということで、十七条に行く前にいろいろな手だてが講じられているというふうに思っております。
私も法律は素人でありますから、法律をどう内容を読むかということに関してはなかなか理解度がないのでありますが、しかし十七条というものを考えた場合、その十三条から十六条、ここまで行政庁がしっかりと取り組んでもなおかつ履行してもらえないということで十七条に入っていくのではないかという理解を私は持っているのでありますけれども、その点について、中野目先生、村岡先生のお話をお聞きできればというふうに思います。
○中野目参考人 今、土井先生が言われたような理解ではないかというふうに私も考えているところでございます。
○村岡参考人 法文の規定からいきますと、確かに十六条まで、是正命令に至るまでは行政庁の管轄、その先に、国家公安委員会が是正命令を相当とする場合には意見を述べるという形なんですね。しかし、今のお話ですと、行政庁の行政取り締まり権限が十分に行使されたけれども失敗したということを想定されているわけですね。それは、果たしてそういう立法が正しいのだろうかという思いがあります。
とりわけ、第十七条では、警察官が登場してくるわけです。先ほど来、効率化といった意味で、検査機能、それからさまざまな情報の集約といった意味で一番効率性があってすばらしいというお話がありましたが、もう一つ考慮しなければならないのは、やはり国民の側から見た外観だろうと思うんですね。そうすると、行政庁の職員が来る場合の身分証明の提示と、明らかに警察官が立ち入りをするといったところでは質的な差があります。
そして、第十七条の五項では、いわば双方の調査といったものが併存することを予定されているわけです。そうしますと、決して行政庁が優位になっているわけではなくて、いわば対等の形で国家公安委員会、しかも警察が主導して動く行為、そういったものが登場してくるわけですから、私は、この法制についてはやはり見直すべきであろうというふうに思います。
○土井亨委員 ですから、私は、先ほどお話ししたとおり、行政庁の検査能力、検査体制というものが今回大切になってくるんだろうというふうに思っております。ただ報告をFIUに取り次ぐだけのような行政庁であれば、まともな検査あるいは指導、是正命令というものはできないだろうというふうに思っております。
ですから、今回の法律の前提にある場合は、所管行政庁の取り組み、検査機能、また協力関係、こういうものが十分にしっかりと充実をしていないといけないんだろうというふうに私は認識をいたしておりますので、それを前提ということで私はこの法律については考えております。
もう一点、今のお話をもとにしまして、十七条というものは、十三、十四、十五、十六というものが前提にあるというふうに私は思います。その際にも、十七条の中には、所管の行政庁との協議や国家公安委員会の事前承認などという安全装置といいますか、極力、所管行政庁でしっかり履行させるように努力せよ、そういうしっかりとしたものが入っているというふうに思っております。
ですから、この点、私は余り不安視するということにはならないんだろうというふうに思いますが、中野目先生の御見解をお聞かせいただきたいと存じます。
○中野目参考人 今の点ですけれども、国家公安委員会による調査が行われるという場合に、それ相応の根拠があって、その上で行われる。それから、制度全体も、マネロンということで、それに対して十分な対策を行う必要があるという一般的な必要性があることはもちろんですけれども、そのほかに、具体的にこの事例については特に調査をする必要があるという根拠があって行われる場合であるということでございます。
それからまた、その調査自体についても、これは今、土井先生の言われたことの黙示的な内容としては令状主義等の問題も絡んでくるのかと思いますけれども、それは、捜索、押収の場合とはやはり基本的に違うという理解をすべきではないか。捜索、押収の場合ですと、警察が令状を持って中に立ち入って、たんすの中まで、金庫の中まで全部あけて調べるということですけれども、この場合の行政調査というのは、そういう徹底的な、全部をひっくり返して見るような捜査を予定しているのではなくて、限定された目的物について閲覧をしたり調査をしたりするということが予定されているだけでございまして、かなり限定された範囲での干渉にとどまっているということです。
そしてまた、調査をするというときにも、身分証ですか、それを携帯して正当な権限を授権されているということを相手方に対して示さなければならない。
それからまた、ここで定められている行政目的を実現するのに必要とされる範囲での調査を行うということですので、その権限が濫用されてしまって、気まぐれ的な判断で、その法執行に当たる人々が何かプライバシーへの過度の干渉を行うのではないかという懸念は当たらないのではないかと思います。
その意味で、憲法三十五条の定めるような令状によって規律をするということをしなくてもいい場合だというふうに考えております。
○土井亨委員 その担保として十四条の三があるんだろうというふうに私は思っておりますが、金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律、これにも同じような規定がございます。
済みません、時間が参りました。この中で、今度は新たに「指導」という第十五条が入っております。必要な指導、助言、勧告ということで、いろいろな意味で十七条に行くまでに安全装置が働くというふうに私は理解をいたしておりますので、その点だけ申し上げさせていただきまして、時間がありませんので、質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
○土井亨委員 終わります。ありがとうございました。
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